4. 角膜・強膜疾患

Author: citronnier // Category:

  1. 角膜の構造
    強膜とともに外膜を構成し、外膜前方の(((1/5)))を占める。

    5層 (((角膜上皮)))、(((Bowman膜)))、(((角膜実質)))、(((Desmet膜)))、(((角膜内皮))) からなる

    • 眼球の形を保持
    • 光を屈折させ、眼球に光を導く
    • (((血管)))がないため無色透明→涙液から栄養をもらう
    • 角膜が結膜や強膜に移行する部位を(((角膜輪部)))という


  2. 角膜の病態

    1. 組織欠損

      • (((点状表層角膜症)))
      • (((角膜びらん)))
      • (((角膜潰瘍)))

    2. 角膜の混濁

      • (((角膜実質炎))) ---(((角膜実質)))の混濁
      • 角膜浮腫---角膜内皮の障害→(((水疱性角膜症)))

    3. (((角膜新生血管 パンヌス )))
    4. 沈着物

      • (((老人環)))
      • (((カイザーフライシャー輪)))(((Wilson))) 病
      • (((フライシャー輪)))(円錐角膜)

    5. 形態の異常

      • (((小角膜)))
      • (((巨大角膜)))
      • (((扁平角膜)))
      • (((円錐角膜)))

    6. 角膜感染症

      • (((細菌性角膜潰瘍)))(細菌感染)
      • (((角膜真菌症)))(真菌感染)
      • (((単純ヘルペス角膜炎)))(ウィルス感染)

        • 上皮型・・①(((樹枝状角膜炎)))

          症状:(((角膜知覚低下))) 治療:(((アクシロピル眼軟膏)))点入:禁忌:(((ステロイド点眼)))
        • 実質型・・・②(((円板状角膜炎)))、③(((壊死状角膜炎)))、④(((角膜ぶどう膜炎)))

      • (((帯状ヘルペス角膜炎)))(ウィルス感染)
      • (((アカントアメーバ角膜炎)))(原生動物)
        症状:(((虹彩毛様体炎))), (((続発性緑内障)))、(((上強膜炎)))、(((外眼筋麻痺)))、(((視神経炎)))

    7. 角膜の腫瘍 

      • (((角膜膜輪部デルモイド)))
      • (((ゴールデンハー症候群)))--(((角膜類皮嚢腫)))+(((福耳)))+(((耳痩孔)))


    8. 角膜移植術
      (((水疱性角膜症)))、(((角膜白斑)))、(((円錐角膜)))、(((角膜変性)))、(((角膜ヘルペス)))、(((角膜潰瘍- 穿孔)))


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2-1. 組織欠損
a)(((点状表層角膜症)))
角膜上皮細胞の最上層が欠損。(((フルオレセイン)))生体染色により検査。

b)(((糸状角膜症)))
変性し剥離した角膜上皮細胞が涙液層のムチンとよじれて糸状に伸びた状態

c)(((角膜びらん)))
上皮層の基底細胞まで欠損

d)(((角膜潰瘍)))
障害部位が基底膜を超えて角膜実質に及ぶ。感染(ヘルペス、細菌、真菌、アメーバ)が主たる原因だが異常な自己免疫反応、酸やアルカリが眼に入って起こる場合、糖尿病や神経系の腫瘍などで角膜の知覚神経が障害されて起こる場合などさまざま。

さらに進行すると・・・
→(((デスメ瘤)))…潰瘍がデスメ膜に達する。痛い(眼球破裂一歩手前)
→(((穿孔 せんこう)))…角膜に穴が開く

2-2. 角膜の混濁
a)(((角膜実質炎)))・・・(((角膜実質)))の混濁
炎症細胞の浸潤、斑痕、沈着物などにより角膜実質が混濁する状態。
図はヘルペス性角膜実質炎。混濁&新生血管が見られる。
(((炎症細胞)))・・・梅毒やウイルスなど 
(((瘢痕)))・・・角膜実質のコラーゲン繊維の廃校の乱れによる 
(((沈着物)))・・・アミロイド、ヒアリン(角膜ジストロフィ)、リン酸カルシウム(帯状角膜変性)

b)角膜浮腫(角膜内皮の障害)
角膜厚が増し、角膜のびまん性混濁が生じる→(((水疱性角膜症)))
角膜の水分調整を行っている角膜内皮細胞が障害されると、前房水が過剰に角膜に侵入し、角膜に水分がたまり、角膜が厚くなり、すりガラス状に混濁する。
※実質の深層に炎症や浮腫があると、デスメ膜のひだが生じる。

2-3. (((角膜新生血管 パンヌス )))
結膜or角膜疾患で新生し、輪部から角膜表層に侵入した血管のこと
結膜が角膜表面に侵入したときも角膜表層に血管侵入が見られる
実質の強い炎症の結果、角膜深部に新生血管が侵入することも。

2-4. 沈着物
a)(((老人環)))
角膜輪部にみられる灰白色のリング状の混濁。老人性変化。
脂質沈着によると言われる。症状はなく、治療の必要はない。

b)(((カイザーフライシャー輪)))(((Wilson))) 病
(((Wilson)))病時、輪部の角膜デスメ膜内に幅1~2mmの緑褐色の着色
(銅の着色)ができる。体内の銅の蓄積が多いことを反映。
※(((Wilson)))病とは…別名:肝レンズ核変性。体内に銅が蓄積することにより、
脳・肝臓・腎臓・眼などが冒される病気。銅沈着、肝硬変、脳変性を起こす。

c)(((フライシャー輪)))(円錐角膜)
円錐角膜時、上皮の輪状の黄褐色の色素新着
が見られる。ヘモジデリンの沈着。
ヘモグロビン由来の黄褐色あるいは褐色の顆粒状あるいは
結晶様の色素であり鉄を含む。

d)その他の沈着
(((帯状角膜変性)))…カルシウム沈着

※この他、脂肪沈着、メラニン色素沈着、
角膜血液染色(ヘモジデリン沈着)、金、銀沈着などがある。

2-5. 形態の異常
a)(((小角膜))) microcorea
先天異常として角膜径の異常を示す
※この先天異常はしばしば両眼性で、微小水晶体と合併する。
眼瞼裂は正常である。軸性近視と合併することもある。

b)(((巨大角膜))) megalocorea
伴性劣性遺伝、またはアクセンフェルド症候群に見られる。
角膜直径は(((12)))mm以上で、角膜厚や眼圧は正常である。

c)(((扁平角膜 )))flat corea
角膜の曲率が(((43)))ジオプトリー以下のとき扁平角膜と呼ばれる。

d)(((円錐角膜))) keratoconus
角膜中央部やや下方向が円錐状に前方に突出

原因:不明 アトピー性皮膚炎の合併多い
症状:多くは両眼性、思春期に発症(進行性)
   角膜中央部が円錐状に突出し、視力低下
※円錐部周辺に褐色輪状色素沈着が線(((フライシャー輪)))
が見られる。
※進行すると、デスメ膜の破裂→急性水腫

治療:初期…ハードコンタクトレンズ装用で矯正視力up
進行…角膜移植

2-6. 角膜感染症
a)(((細菌性角膜潰瘍)))(細菌感染)
角膜上皮のキズから細菌やカビが侵入して感染し潰瘍を生じる。
治りにくく、治癒後も混濁や視力障害が残る場合が多い。

原因 黄色ぶどう球菌、肺炎レンサ球菌、緑膿菌などの細菌感染
→角膜外傷(鉄粉、稲穂)、ソフトコンタクトレンズ装用、ステロイド点眼など
症状 羞明、流涙、眼痛、眼窩腫脹、結膜の充血、浮腫、
※急激に進行する!!(((3~4)))日で角膜の大半を覆う。
※進行すると、実質に潰瘍形成→前房蓄膿→角膜穿孔
※匍行性角膜炎(わずかずつ斜面を下る)
治療 抗菌薬点眼、全身投与(続発虹彩炎に対して(((アトロピン)))点眼で消炎)

b)(((角膜真菌症)))(真菌感染)
真菌に汚染された植物片(棘)の刺傷や汚染コンタクトレンズの装着などによって感染、発症することが多い。最近では、副腎皮質ステロイド点眼剤が誘因となる場合が増えている。原因となる真菌は数十種類報告されている。

糸状菌…角膜外傷など
酵母菌…ステロイド使用やDMなどによる免疫抑制状態

症状 異物感・眼痛・流涙・眼輪腫脹・結膜&毛様充血
角膜混濁・潰瘍→前房蓄膿→穿孔→前眼球炎
※潜伏期は細菌感染より長く、経過も遷延性。難治性。

治療 抗菌約点眼・全身投与・(((アトロピン)))点眼
硫酸アトロピン=抗コリン剤(副交感神経遮断剤)

c)(((単純ヘルペス角膜炎)))(ウィルス感染)
別名角膜ヘルペス
(((単純ヘルペスウイルス)))による角膜感染症。通常は片眼性。再発性。難治のものが多い。
上気道感染やその他の発熱、紫外線刺激、生理、過労、ステロイドの長期投与などの誘因による単純ヘルペスウイルス(Ⅰ型に多い)の再活性化が原因

★上皮型ヘルペス
①:(((樹枝状角膜炎:再発性)))
・角膜上皮に樹枝状を呈する潰瘍。上皮型ヘルペスの代表例。
・潰瘍が(((フルオレセイン)))に染まって見られる。
・先端が棍棒状に膨らむ
・角膜知覚低下が特徴的
・進行すると実質の病変に移行
原因 単純ヘルペスウイルスによる感染
症状 異物感・羞明・流涙
治療 (((アシクロピル)))眼軟膏点眼 (((ステロイド)))点眼は禁忌!!

★実質型ヘルペス
②(((円板状角膜炎)))
実質型ヘルペスの代表例。円形の実質混濁をきたす。
原因:単純ヘルペスウイルス他、帯状ヘルペス、
水疱などのウイルス感染による
症状:異物感、羞明、流涙、
※樹状角膜炎に比べ、混濁による視力低下が激しい
治療:(((アシクロピル)))眼軟膏点眼、(((ステロイド)))点眼・内服、IDU点眼・軟膏

③(((壊死状角膜炎)))
実質型ヘルペスのもうひとつの代表例。
血管を伴う壊死病変が実質内に生じる。
治療:(((アシクロピル)))眼軟膏点眼、(((ステロイド)))点眼・内服、IDU点眼・軟膏

④(((角膜ぶどう膜炎)))
(((虹彩毛様体炎)))を併発。
症状 前房混濁、角膜後面沈着虹彩後癒着 →眼圧上昇

d)(((帯状ヘルペス角膜炎)))(ウィルス感染)
角膜炎の一種。水痘・帯状ヘルペスウイルスによる感染症。
目の付近や鼻などに水痘が出、症状が治まっても
目の周りに痛みを伴う後遺症が残ることがある。
原因 : 水痘・帯状ヘルペス感染による→初感染で水痘を発症、
再発で角膜炎発症
症状:皮膚病変(眼部帯状疱疹)→上皮欠損、実質性角膜炎
合併症:(((虹彩毛様体炎)))、(((前房蓄膿)))、(((角膜後面沈着物))) 
(((続発緑内障)))、(((上強膜炎)))、(((視神経炎)))、(((外眼筋麻痺)))
治療:(((アシクロピル点眼)))、(((アトロピン点眼)))、(((ステロイド)))眼軟膏

e)(((アカントアメーバ角膜炎)))(原生動物)
原因:(((アカントアメーバ)))(原生動物)の角膜侵入、感染
ソフトコンタクトレンズ装用による感染が多い。
症状:痛痒感、上皮に偽樹枝状角膜炎・放射状角膜炎、実質に円盤状の浸潤
※角膜真菌症や単純ヘルペス角膜炎と間違える
治療:病巣掻爬(そうは:かきとること)、抗真菌薬の点眼、全身投与

2-6.角膜の腫瘍
輪部に発生する先天性良性腫瘍(((角膜輪部デルモイド)))
毛髪を有することもある

治療)角膜乱視による弱視…弱視治療
美容目的…表層角膜移植
※悪性化することはなく、治療は主に整容上行う。
※乱視の軽減のために手術が必要なこともある。
※角膜への浸潤度により、単純切除で良い場合と角膜移植が
必要な場合がある。

cf) (((ゴールデンハー症候群)))
頭蓋の非対称、特に片側の頬骨や下顎枝、
下顎頭の低異形成や眼球結膜の皮様嚢胞や眼の奇形に加え、
耳部の形態異常、難聴を呈する
(((角膜類皮嚢腫)))+ (((福耳))) +(((耳痩孔)))がみられる。

3.角膜移植
角膜が外傷や感染症、遺伝的疾患などにより透明性を失ったり、変成や変形により網膜に結像できなくなった場合に行われる。表層のみを交換する表層角膜移植手術と全体を入れ替える全層角膜移植手術がある。  

対象疾患:(((水疱性角膜症)))、(((角膜白斑)))、(((円錐角膜)))、(((角膜変性)))、(((角膜ヘルペス)))、(((角膜潰瘍(穿孔))))など

4. 強膜の炎症

4-1.((( 上強膜炎)))
原因)不明・(((関節リウマチ)))、(((眼部帯状ヘルペス)))、梅毒などに合併
症状)羞明、流涙、(((結膜下=上強膜血管)))の充血、隆起
治療)(((ステロイド)))点眼→予後良好

4-2. 強膜炎症
原因)不明、(((関節リウマチ)))などに合併
症状)羞明、(((眼痛)))、(((視力障害)))、/毛陽充血
角膜炎や(((虹彩毛様体炎)))を伴う
治療)(((ステロイド)))点眼・全身投与→重篤・予後不良例あり